創業115年、播州織の産地である兵庫県西脇市からテキスタイルの楽しみを発信するブランド「POLS」

伝統ある播州織に独創的なデザインを取り入れ、だれにも負けない技術でその可能性を豊かにする。 POLSというチームが創造する世界は、これまで見たことのないクリエイティブが詰まっています。地方から世界に挑戦するPOLS、チームの代表である丸山さんにお話しをお伺いしました。

◆POLS(ポルス)誕生

―ブランドを立ち上げた経緯を教えてください。

丸山 : POLSは創業1901年の先染織物メーカー「丸萬」(兵庫・西脇市)が立ち上げたテキスタイルのブランドです。

POLSを立ち上げるまで、バブル期にはシャツ地を海外に輸出するくらい大量生産を行っていました。ですが、トレンドの移り変わりや輸入品の増加など、繊維業界にも大きな変化が起こり、私たちの「生地を生産して販売する仕事」にも栄枯盛衰があると知りました。当時を思い返せば、衰退の時期に入っていたんだと思います。

その当時は、「新しい市場で事業を立ち上げていかないと」という気持ちが強かったですし、このままでは「播州織」という伝統を後世に繋げられないという不安で、必死の思いでした。そんな試行錯誤の中、テキスタイルデザイナーの梶原加奈子さんと出会います。

 梶原さんとの出会いが変えたものは?

丸山 : 梶原さんは、世界的に有名なコレクションブランドでテキスタイルを企画されていた方です。イギリスではテキスタイルの研究もされていました。梶原さんが帰国後「播州織にファッションの要素を取り入れた、レイヤー織りのテキスタイルを作れないか」という相談がありました。

レイヤー織りとは、ガーゼのように生地と生地が縫い合わさっているように見えて、実は1枚の生地の表面と裏面に異なる柄を一度で織る、2重構造の特殊な技法です。当時は新しい発想に共感しつつも、今の技術で表現することが可能か考えましたね。

ただ、ちょうどその頃、会社でコンピュータージャカードという織機設備を導入したころだったんです。何か1つのきっかけではなく大きな流れだったと感じています。

「自分たちの技術とこの織機設備なら、梶原さんのアイデアを形にできるかもしれない」

この運命的な出会いが、POLSの誕生です。

 ◆POLSが大切にしているもの

 丸山 :きっかけになったのは、クリエイターさんたちとの出会いですね。

これまでは、既に柄がプリントされた生地を使用していたクリエイターさんから「自分のデザインを“織り”という技術を生かし、柄として作ってみたい」 「平面プリントではなく、立体的に作ってデザインの幅を広げたい」というご意見が多く、POLSとして別注で作ってほしいと依頼を頂くようになりました。クリエイターさんの様々なデザイン表現の要望に応え続けてきた結果、有名なコレクションブランドからもお仕事の依頼を頂けるようになりました。POLSというブランドを少しずつではありますが、求められているのを実感しました。

個人として思う事は、POLSは出会ったお客さんに育てて頂いている部分も大きい。

僕たちが作り上げた物を気に入って下さるお客様がいなかったら、今のPOLSはない。

この気持ちはこれからも大切にしていきます。

 ◆ランウェイを歩くPOLS

―技術が世界に認められたんですよね?

丸山 : 2年前、世界的なブランドが主催したコンペに参加させて頂きました。そのコンペでPOLSが制作したワッペンジャガードを発表したんですが、おかげさまで世界1位を獲らせて頂きました。めちゃくちゃ光栄ですね。

その後も有名なブランドからオファーを頂き、実際にPOLSで作った生地がパリコレのランウェイを歩いたんです。POLS独自の技術を確立し、こだわり抜いた手法で、世界的ブランドと仕事が出来た実感がすごくありましたね。

簡単にはマネできないものを作っていると思っています。

◆綿花1年計画

 ―地域での取り組み

丸山 : 人との繋がりを「ものづくり」に生かしたいという思いがあって、人との関わりを増やしたかったんです。その一環で、西脇市が運営している「綿花を育てる」活動に、スタッフも積極的に参加しています。伝統を作った人たちのプロジェクトを、地域の若者や私たちのような外部から来た人々が一緒になって1年間取り組むんです。子供の頃にやっていた地域の活動やイベントって、大人になってから参加する事って、多くないじゃないですか?

こういう経験が西脇に来て楽しいなと思える事の一つです。

 

 ◆POLSの取り組み

―廃棄ロスへの思いを聞かせてください。

丸山 : POLSを立ちあげた時に、「これはやりたくない」と思っていたこと。

セールで叩き売ってシーズンごとに消化する。頑張って作った物へのぞんざいな扱いはどうしても避けたかったんです。

とはいえ、どの商品がお客様の支持を得るかは作ってみるまで分かりませんし、売れ残ってしまうと管理も大変です。更に、POLSは立ち会上げの時から現在まで、大々的にセールをしない取り組みをしています。そうなると事業としては在庫過多で身動きが取れなくなってしまう。そんな時、たどり着いたのが「先行受注オーダー」。この取り組みを使えないかと思いました。

お客様にはご納得いただいた上で、最高の商品をお届けする。「3ヶ月かかります。気に入って下さった商品はPOLSがしっかり作ります」とお伝えしています。

受注分を作る流れにすれば、廃棄されていたはずの物が出来る限り少なくて済みます。廃棄ロス問題の軽減も視野に入れた活動は、これからも大切にしていきたいです。

 

 ◆POLSの挑戦

丸山 :POLSの挑戦は常に違った表現を求め、誰にも真似できないものを創造し続ける事だと思っています。それがブランドの成果や結果に繋がる部分でもあり、自分たちの想いから導いていきたい。ただ、POLSだけで自立するのは、ちょっと違う。

ここまでこれたのは、自分たちだけの力ではないですし、POLSも誰かの力になりたい。

―POLSの目指す先を教えて下さい。

僕らだから出来る事って何か考えた時「駆け込み寺みたいな存在になれたら」という思いがあります。

「できません、やってくださいー!」って言われ続けるPOLSって、なんだか面白くないですか。(笑)

これまで関わってきた人たち、これから出会う人たちとの繋がりを大切にし、POLSというブランドを今までにないものにしていきます。

 

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 ■POLS(ポルス)

創業115年を迎えた、先染め織物の産元商社「丸萬」(兵庫・西脇市)から、2015年誕生したブランドです。ジャカード織で制作された、インテリアやファッションのアイテムを中心に、「テキスタイルの楽しみ」を発信していきます。

DESIGN: KAJIHARA DESIGH STUDIO

ART DIRECTION: SUN-AD Company Limited

PRODUCTION: MARUMAN Inc.

播州織(ばんしゅうおり)産地 / 兵庫県西脇市 兵庫県のやや東に位置する西脇市。大正時代に「西脇の北緯35度東経135度」は日本の真ん中と認定された歴史を持つ。ユニークな形の山々に囲まれ、どこかの惑星のようなゴツゴツした河原や、ふいに別の道につながるY字路など、不思議な風景がひろがります。市内を加古川、杉原川、野間川の3つの河川が流れ、豊かな水源が染めの技術を進化させましたが、時には大きな水害をもたらすこともありました。芸術家の横尾忠則氏を輩出した地としても知られています。

POLS公式サイト

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